2000/12/26

波 2001/1号

喋るカカシのいる島で 『オーデュボンの祈り』





自由に人を殺してしまう「桜」をはじめ、この作品にはあり過ぎるほど癖のある人たちが登場します。嘘しか吐かない画家とか、自分では動けないほど太った市場の売り子とか。中でも印象的なのは、いい所で気の利いた警句を言うお祖母ちゃんですね。実際に、ああいうお祖母ちゃんがいたのですか?



僕の祖母は二人とも元気ですが、あんな偉そうなことは言わないですよ(笑)。ただ、何年か前に「自分の人生なんだから好きに生きた方がいい」と言われたことがあるんです。それは、説教や自慢話でなく、長く生きた人の実感に聞こえたんですね。人生の先輩がそう感じるのなら、それは一理あるのかもしれない、と。
 祖母の知恵というのは、親の教えよりももっと普遍的な気がするんです。長い経験を持つ人が書いた、人生というゲームの非公式攻略本みたいなものですか。別にそれを読んだからといって攻略できるわけでもないんですが(笑)、でもなぜか読んでしまう。で、騙される、と(笑)。



伊坂さんにとって、小説を書く、小説家になるということは、やはり「好きに生きる」ということなんですよね?



まさにその通りです。祖母の言葉を聞いた時、まっさきに思ったのは「そうか、小説を書いていいんだ」ということでした。ジャン・ジャック・ベネックスという監督の映画の中で、「愛のない人生なんて最低だ」という台詞が出てきますが、「何も創り出さない人生なんてゴメンだ」と、そんな気分でした。



2000/12/01

オーデュボンの祈り



「オーデュボンの祈り」単行本


  • 2000/12

  • 新潮社

  • 単行本

  • ¥1,785(絶版)




「オーデュボンの祈り」文庫本


  • 2003/11

  • 新潮文庫

  • 文庫本

  • ¥660





警察から逃げる途中で気を失った伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。翌日、島の預言者・喋るカカシが死体となって発見される。未来を見通せるはずのカカシが、なぜ自分の死を阻止できなかったのか?