2006/09/24

読売新聞 2006/9/24

本よみうり堂 HONライン倶楽部 伊坂幸太郎の巻




『ある先輩作家さんが、「たぶんね、小説というのは、どこかで悲しみに暮れている誰かに、寄り添うような、そういうものなんだよ」と言ってくれた。

��中略-

等身大の話かな、と読み進めていたら、いつの間にか、現実が溶けた妙な場所に到着していて、これは等身大どころか見たことのない場所だぞ、とにやにやしてしまうようなものが、
寄り添ってくれる小説ではないかな、と僕は思う。そして読んだ人が、本を閉じた後、「あんな景色を見てきたんだから、大丈夫」と根拠のない自信をお腹に抱えて、(それは、ロックンロールを聴いた時と似ているのかもしれないけれど)、「とりあえず、やりますか」と、気が進まない学校に向かったり、放り投げたい仕事に取り掛かる。そういう力のある小説が読みたくて、だから、自分も書ければいいな、と思う。』